認知症・介護・後見

成年後見制度とは?申し立て方法・費用・流れをわかりやすく解説

成年後見制度の法的書類イメージ
木田健太郎

「親が認知症になったとき、財産を守るにはどうすればいいか」——これが成年後見制度を調べ始めたきっかけでした。義祖母が90歳を超え、「もしものとき」が現実的な問題として迫ってきたからです。

成年後見制度は、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人を法的に保護する仕組みです。名前は知っていても、申し立て方法・費用・期間・誰がやるのかがわからない方が多いと思います。この記事で、一から解説します。

成年後見制度の全体像:2つの種類

種類 タイミング 後見人の選び方 特徴
法定後見 判断能力が低下した後 家庭裁判所が選任 「後見・保佐・補助」の3段階
任意後見 判断能力があるうちに 本人が契約で決める 将来への自主的な備え

法定後見の3種類:判断能力の程度で使い分ける

後見(判断能力がほぼない状態)

日常的な買い物もできないレベルで判断能力が低下している場合に使います。後見人がほぼすべての法律行為を代理し、本人が単独でした行為は原則として取り消せます。認知症の末期段階などで使われることが多いです。

保佐(判断能力が著しく不十分な状態)

日常的な行為はできるが、不動産の売買・多額の借入・遺産分割などの重要行為には保佐人の同意が必要な状態。認知症の中等度段階などで使われます。

補助(判断能力が不十分な状態)

判断能力は一定程度あるが、特定の行為(不動産売買など)について支援が必要な場合。本人の同意のもと、特定の行為について補助人が支援します。

申し立て手順:ステップごとに解説

ステップ1:医師の診断書を取得する

家庭裁判所所定の書式による診断書が必要です。かかりつけ医に「成年後見の申し立て用の診断書を書いてほしい」と依頼してください。費用は5,000〜15,000円程度。鑑定が必要と判断された場合はさらに5〜10万円かかります。

ステップ2:必要書類を収集する

主な必要書類:

  • 申立書(裁判所の書式)
  • 本人の戸籍謄本・住民票・登記されていないことの証明書
  • 申立人の戸籍謄本・住民票
  • 後見人候補者の住民票・身分証明書
  • 診断書(裁判所書式)
  • 財産目録・収支状況報告書(本人の財産・収支の一覧)
  • 収入印紙800円・郵便切手

書式は裁判所のウェブサイトから入手できます。参考:裁判所:後見開始の審判

ステップ3:管轄の家庭裁判所に申し立てる

本人の住所地を管轄する家庭裁判所に書類を提出します。郵送でも申し立て可能です。

申立人になれる人(親族の範囲):本人・配偶者・4親等内の親族・検察官・市区町村長など。

ステップ4:調査・面接・必要に応じて鑑定

申し立て後、裁判所は以下を行います:

  • 本人との面接(判断能力の確認)
  • 後見人候補者との面接
  • 親族への照会
  • 必要に応じて医師による鑑定(5〜10万円)

ステップ5:後見人が選任される

申し立てから審判まで通常2〜4ヶ月かかります。家族が後見人候補者として申し立てても、最終的には裁判所が決定します。財産が多い・親族間に紛争がある場合は、司法書士・弁護士などの専門家が選任されることが多いです。

費用の全体像

申し立て時にかかる費用

費用項目 金額
申立手数料(収入印紙) 800円
登記手数料 2,600円
郵便切手 3,000〜5,000円程度
診断書作成料 5,000〜15,000円
鑑定費用(必要な場合) 5〜10万円
司法書士への依頼費用(任意) 10〜30万円程度

後見人への継続的な報酬

後見人には、本人の財産から報酬が支払われます(家庭裁判所が決定):

  • 管理財産が5,000万円以下:月額2〜3万円程度
  • 管理財産が5,000万円超:月額5〜6万円程度
  • 専門家(弁護士・司法書士)が後見人の場合:さらに高くなる場合も

成年後見制度の問題点と注意事項

一度開始すると原則として終了できない

後見開始の審判がなされると、本人が死亡するか回復するまで続きます。「やっぱりやめたい」とは言えないため、慎重に検討することが必要です。

財産の使い方が制限される

後見人は本人の財産を「本人のために」のみ使用しなければなりません。「孫への贈与」「相続対策のための生命保険加入」などは基本的にできません。

任意後見制度:元気なうちに自分で後見人を決める

判断能力があるうちに公証役場で「任意後見契約」を締結し、将来の後見人を自分で指定しておく制度です。

メリット:

  • 自分で後見人(家族・弁護士等)を選べる
  • 財産管理の方針をある程度指定できる
  • 法定後見より本人の意思が反映されやすい

費用:公証役場での契約費用1〜2万円 + 専門家依頼費用10〜30万円程度。

成年後見 vs 家族信託:どちらを選ぶか

比較項目 成年後見(法定) 家族信託
開始タイミング 認知症になった後 元気なうちに契約
財産管理の自由度 低い(裁判所監督) 高い(契約次第)
身上監護 できる できない
費用(継続) 月2〜6万円(後見人報酬) 原則なし

財産管理には家族信託、身上監護(医療・介護)には任意後見、という組み合わせが理想的とされています。詳細は「家族信託とは?仕組みとメリット・デメリットをわかりやすく解説」をご覧ください。

まとめ

成年後見制度は認知症になった親の財産を守るための大切なセーフティネットですが、費用・制約・手間がかかります。最善策は「元気なうちに家族信託または任意後見で備えること」です。

まずは地域の「成年後見センター」や司法書士への無料相談から始めてみてください。親の認知症対策全般については「親が認知症になったら財産はどうなる?」も参考にしてください。

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家族の終活ノート
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義祖母が2024年に90歳を迎えたことをきっかけに、相続・後見・葬儀を家族で一から調べ始めました。最初は「相続税ってそもそもいくらから払うの?」というレベルで、法務局に電話して手続きを確認したり、銀行の窓口で口座凍結の話を聞いたりしながら少しずつ知識を積み上げました。弁護士でも税理士でもありませんが、「同じ状況の家族が調べたらこうなった」という記録として、費用・期限・手順を具体的に書くことを大切にしています。
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