認知症・介護・後見

親が認知症になったら財産はどうなる?成年後見制度をわかりやすく解説

認知症・介護のイメージ
木田健太郎

「もし義祖母が認知症になったら、財産はどうなるんだろう」——これは、終活を考え始めたときから頭から離れない不安でした。

調べてみてわかったのは、認知症になった後では「できること」が法律上、大幅に制限されるということ。早めに知っておかないと、家族が本当に困る事態になります。この記事では、認知症になった後に起こること・対処法・事前にできる備えを解説します。

認知症になると何が起きるか:法律上の問題

銀行口座が「事実上凍結」される

法律上、判断能力が失われた人は有効な法律行為ができないとされています。銀行はATMでの大きな引き出しや手続きを拒否するようになります。特に窓口での手続きは「本人確認」が厳しくなっており、認知症と判明した場合には実質的に口座が使えなくなります。

義祖母の知人の例では、夫が認知症になり、妻が夫の口座から生活費を引き出そうとしたところ、「ご本人様以外は対応できません」と断られ、しばらく大変な思いをしたそうです。

不動産の売却・活用ができなくなる

不動産の売買・賃貸借契約・リフォームなど、不動産に関する重要な契約は本人の有効な意思表示が必要です。認知症で判断能力がなければ、たとえ老人ホームの入居費を捻出するために実家を売りたくても、売れない状況になります。

相続対策・贈与ができなくなる

認知症になってからでは、生前贈与遺言書の作成・家族信託の締結が「法的に有効」とみなされない可能性が高くなります。対策は必ず認知症になる前に行わなければなりません。

認知症の発症リスク:早めの対策が必要な理由

年齢 認知症の有病率(目安)
65〜69歳 約2〜3%
70〜74歳 約4〜5%
75〜79歳 約10〜12%
80〜84歳 約22〜24%
85歳以上 約40〜50%

参考:厚生労働省:認知症施策

義祖母は90歳なので、統計上は2人に1人が認知症という年齢。「まだ大丈夫」ではなく「いつなってもおかしくない」という認識で準備しておくことが重要です。

認知症になった後の対策:成年後見制度

法定後見制度とは

認知症などで判断能力が低下した後に利用できるのが法定後見制度です。家庭裁判所に申し立てを行い、「後見人」を選んでもらいます。後見人が財産管理・日常的な契約の代行を行います。

法定後見の3段階(判断能力の程度による):

種類 判断能力の状態 後見人の権限
後見 ほぼない ほとんどすべての法律行為を代理
保佐 著しく不十分 重要な財産行為に同意・取消権
補助 不十分 特定の行為に限って支援

成年後見制度の問題点

成年後見制度はセーフティネットとして重要ですが、いくつかの制約があります:

  • 家庭裁判所の監督を受ける:財産の使い道が制限される(相続対策・贈与・積極的な投資は基本的にできない)
  • 費用が継続してかかる:専門家後見人(弁護士・司法書士)が選任されると月2〜6万円の報酬が本人の財産から支払われる
  • 一度始めると止められない:本人が回復しない限り、死亡まで続く
  • 親族が後見人になれないことも:財産が多い・家族間に紛争がある場合、専門家が選任されることが多い

詳しくは「成年後見制度とは?申し立て方法・費用・流れをわかりやすく解説」をご覧ください。

認知症になる前の対策①:家族信託

家族信託の仕組み

家族信託は、元気なうちに「信頼できる家族(受託者)」に財産の管理・処分を任せる契約を公証役場で結んでおく方法です。認知症になっても受託者が契約に基づいて財産を管理できるため、口座凍結・不動産の売却不可といった問題を事前に防げます。

例えば、「親(委託者)が長男(受託者)に実家と預金口座の管理を信託する。認知症になった後も、老人ホームの費用を賄うために実家を売却できる」という形で設計します。

家族信託のメリット

  • 成年後見制度より自由度が高い(裁判所の監督なし)
  • 不動産の売却・賃貸など、積極的な財産活用が継続できる
  • 遺言の機能も持たせることができる(受益者連続型)

家族信託のデメリット

  • 設定に専門家費用が必要(30〜100万円程度)
  • 身上監護(介護・医療の手続き)はカバーできない
  • 農地など一部の財産は信託できない

詳細は「家族信託とは?仕組みとメリット・デメリットをわかりやすく解説」を参照してください。

認知症になる前の対策②:任意後見制度

任意後見とは

任意後見制度は、判断能力があるうちに公証役場で「任意後見契約」を結び、将来の後見人を自分で選んでおく制度です。認知症になったときに、選んでおいた人(任意後見人)が財産管理・身上監護を行います。

家族信託との最大の違いは、任意後見は身上監護(入院・施設入居の手続き等)もカバーできる点です。

任意後見の費用

  • 公証役場での契約費用:1〜2万円程度
  • 司法書士・弁護士への依頼費用(書類作成):10〜30万円程度
  • 任意後見監督人の報酬(制度開始後):月1〜3万円

3つの制度の比較:どれを選ぶべきか

比較項目 法定後見 任意後見 家族信託
開始時期 認知症になった後 元気なうちに契約 元気なうちに契約
後見人 裁判所が選任 自分で選んでおく 家族(受託者)
財産管理の自由度 低い(裁判所監督) 低〜中(監督人あり) 高い(契約内容次第)
身上監護 できる できる できない
初期費用 数万円 10〜30万円 30〜100万円

今日からできる具体的な対策

親が元気なうちにできることを、優先度順に並べます:

  1. エンディングノートに財産情報を記録してもらう(すぐにできる)
  2. 司法書士・弁護士に相談し、家族信託または任意後見の検討を始める
  3. 認知症に関する知識を家族で共有し、早期発見・早期対応の準備をする

地域の「成年後見センター」「地域包括支援センター」では、無料相談を受け付けています。まずは気軽に相談してみることをおすすめします。

まとめ

認知症と財産管理の問題は「なってから考える」では手遅れになるケースが多い問題です。元気なうちの備えが、家族全員を守ります

「難しそう」と感じる方も多いと思いますが、まずは地域包括支援センターや司法書士への相談から始めてみてください。義祖母の場合も、専門家に相談した結果「今のうちにできることがある」とわかり、安心感が増しました。

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義祖母が2024年に90歳を迎えたことをきっかけに、相続・後見・葬儀を家族で一から調べ始めました。最初は「相続税ってそもそもいくらから払うの?」というレベルで、法務局に電話して手続きを確認したり、銀行の窓口で口座凍結の話を聞いたりしながら少しずつ知識を積み上げました。弁護士でも税理士でもありませんが、「同じ状況の家族が調べたらこうなった」という記録として、費用・期限・手順を具体的に書くことを大切にしています。
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