相続・遺産手続き

相続登記の義務化とは?2024年からの期限・罰則・手続きをわかりやすく解説

実家の土地と家のイメージ写真
木田健太郎

義祖母が90歳になったとき、私たちが最初に頭を悩ませたのは「実家の土地と家はどうなるのか」という問題でした。義祖父が亡くなってからもう20年近く経ちますが、義祖父名義の不動産登記がそのままになっているというのです。「ずっとほったらかしにしてたんだけど、大丈夫かしら」と義祖母。調べてみると、2024年4月からこれが法律で義務化されたと知り、思わず青ざめました。

この記事では、2024年4月に施行された相続登記の義務化について、私が実際に調べた内容をもとにまとめています。「親の不動産、名義変更していない」「昔の相続を放置したまま」という方にとって、まず読んでほしい1記事です。期限・罰則・費用・手続きの流れを、できる限りわかりやすく整理しました。

なお、相続全般の手続きの流れについては、相続手続きの流れと期限一覧もあわせて参考にしてください。

相続登記の義務化とは?2024年4月に何が変わった?

2024年4月1日、法務省による不動産登記法の改正が施行され、相続登記(相続による不動産の名義変更)が法律上の義務になりました。それまでは「やった方がいいけど、やらなくても罰則はない」という状況でしたが、これが大きく変わりました。

なぜ義務化されたのか?「所有者不明土地」問題

義務化の背景には、日本全国に広がる「所有者不明土地」問題があります。登記名義人がすでに亡くなっているのに名義変更がされず、連絡を取ろうとしても相続人が誰かわからない土地が、国土の約22%(九州の面積とほぼ同等)にのぼると言われています。

道路や公共施設の整備、災害復旧など、行政が土地を活用しようとしても所有者と連絡が取れず、事業が止まってしまうケースが続出。この問題を解消するために、登記を義務化する法改正が行われました。

義務化の内容:期限と対象者

義務化の内容を整理すると、以下のとおりです。

項目 内容
義務化の対象 不動産(土地・建物)を相続によって取得した人
申請期限 相続開始を知った日(通常は死亡日)から3年以内
申請先 不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)
罰則 正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料
施行日 2024年4月1日

過去の相続も対象!遡及適用に要注意

「2024年以降の相続だけが対象では?」と思うかもしれませんが、実は2024年4月1日より前に発生した相続も対象です。ただし、経過措置として2027年3月31日(施行から3年間)が猶予期限となっています。

つまり、義祖父の相続のように何十年も前に発生した未登記の不動産についても、2027年3月31日までに登記申請を行わなければならない、ということです。「昔のことだから関係ない」では済まなくなりました。

期限・罰則の詳細:3年以内に申請しないとどうなる?

「3年以内」「10万円以下の過料」と聞いても、ピンとこない方も多いかと思います。もう少し詳しく掘り下げます。

「3年以内」の期限の数え方

期限の起算点は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」です。ほとんどのケースでは亡くなった日(死亡日)から3年以内と考えて問題ありません。

ただし、遺産分割協議(相続人全員で遺産の分け方を決める話し合い)が長引いている場合は、協議が成立した日から3年以内という別の期限もあります。遺産分割の成立が遅れても、その分だけ期限が延びるわけではないので注意が必要です。

10万円以下の過料とは

過料(かりょう)」とは、行政上のペナルティの一種です。刑事罰の「罰金」とは異なり、前科にはなりませんが、裁判所が決定して支払い義務が生じます。

過料の金額は「10万円以下」ですが、実際には違反の程度や事情によって個別に判断されます。ただし「正当な理由がない場合」に科されるため、放置していると高額になる可能性もあります。

「相続人申告登記」という猶予制度を活用する

遺産分割協議がまとまらずに3年以内の登記が難しい場合、「相続人申告登記」という制度を使うことができます。

これは「私はこの不動産の相続人です」と法務局に申告するだけの簡易な手続きで、相続登記の申請義務を一時的に果たしたとみなされます。費用は無料(登録免許税がかからない)で、遺産分割協議が成立した後に改めて通常の相続登記を行うことになります。

  • 遺産分割がまとまっていない → まず相続人申告登記で義務を回避
  • その後、協議が成立したら → 通常の相続登記を申請

相続登記にかかる費用の目安

費用については「思ったよりかかった」という声をよく聞きます。調べてみると、大きく分けて「登録免許税」と「専門家報酬」の2つがかかることがわかりました。

登録免許税の計算方法

相続登記には登録免許税(不動産の名義変更にかかる税金)が必要です。

計算式:固定資産税評価額 × 0.4%

例えば、固定資産税評価額が2,000万円の土地と500万円の建物があれば、合計2,500万円 × 0.4% = 10万円の登録免許税がかかります。固定資産税評価額は、毎年届く「固定資産税の納税通知書」で確認できます。

なお、相続登記(相続による移転)の登録免許税は0.4%ですが、売買による移転は2.0%と5倍です。相続のタイミングで登記しておく方が税負担が少ないことも、早めに対処すべき理由の一つです。

司法書士に依頼した場合の費用

相続登記の手続きは自分でもできますが、書類の収集や法務局への手続きが複雑なため、司法書士に依頼するケースが多いようです。

費用の種類 目安
登録免許税 固定資産税評価額 × 0.4%
司法書士報酬 5万〜15万円程度(案件の複雑さによる)
戸籍謄本等の取得費用 数千円〜1万円程度
合計目安 10万〜25万円程度(評価額2,000万円の場合)

相続人が多い・遺産分割協議が必要・複数の不動産がある場合は、報酬が高くなる傾向があります。複数の司法書士に見積もりを取るのがおすすめです。

自分で手続きする場合のポイント

費用を抑えたい場合、相続人自身で登記申請することも可能です。法務局の窓口では「登記相談」を無料で行っており、書類の書き方などを教えてもらえます。また、法務局のオンライン申請システムを利用すれば、郵送や窓口に行かずに手続きを進めることもできます。

相続登記の手続きの流れ

実際に相続登記を進める場合、大まかに以下の流れになります。義祖父の不動産について私たちが調べた内容をもとに整理しました。

STEP1:必要書類の収集

相続登記に必要な書類は、状況によって異なりますが、基本的なものは以下のとおりです。

  • 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの全戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産を取得する相続人の住民票
  • 固定資産税評価証明書(市区町村役場で取得)
  • 遺産分割協議書(相続人が複数いる場合)+相続人全員の印鑑証明書
  • 登記申請書(法務局の書式、またはオンライン)

戸籍の収集が一番手間がかかります。被相続人が転籍を繰り返している場合、複数の市区町村から戸籍を取り寄せる必要があり、1〜2週間かかることも珍しくありません。義祖父の場合は転籍が2回あり、3か所の市役所に郵送で請求しました。

STEP2:法務局への申請

書類が揃ったら、不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。申請方法は3種類です。

申請から登記完了まで、通常1〜2週間程度かかります(法務局の混雑状況によって前後します)。登録免許税は、法務局が発行する「収入印紙」で納付するのが一般的です。

STEP3:登記完了後の確認

登記が完了すると「登記識別情報通知(いわゆる権利証の新形式)」が発行されます。これは不動産の新しい所有者であることを証明する重要書類ですので、絶対に紛失しないよう保管してください。

また、登記完了後は法務局で「登記事項証明書」を取得して、名義が正しく変更されているか確認することをおすすめします(600円程度で取得可能)。

よくある失敗・注意点

相続登記で「こんなはずじゃなかった」となりやすいポイントをまとめました。

注意①:土地だけでなく建物も別々に登記が必要

土地と建物は別々の不動産として扱われます。「土地の登記をした」だけでは建物の名義変更は完了していません。実家の場合、土地・建物それぞれについて登記が必要です。また、未登記建物(増築部分が登記されていないなど)が発覚するケースもあるので、まず登記事項証明書で現状確認することをおすすめします。

注意②:放置すると「数次相続」でさらに複雑に

義祖父の不動産のように長期間放置していると、その間に相続人(例えば義祖父の子ども)が亡くなっていることがあります。これを「数次相続」といい、権利関係が複雑になります。関係者が増えるほど、全員の同意を取るのが難しくなり、登記手続きのコストも上がります。「次の代に先送りすると、もっと大変になる」というのが、相続登記を早めに済ませた方がいい最大の理由です。

注意③:相続放棄しても登記義務は免除にならない場合がある

相続放棄(家庭裁判所に申述して相続権を放棄すること)をすれば、その人は相続人ではなくなります。しかし、他の相続人が残っている場合は、その方々に登記義務が引き継がれます。また、相続放棄した場合でも、他の相続人が全員放棄して管理者がいなくなった場合、「相続財産清算人」の選任が必要になるなど別途手続きが発生することもあります。相続放棄の詳細は相続放棄の手続き方法と期限をご覧ください。

注意④:マンションの場合は「敷地権」も確認する

マンションを相続した場合、建物の区分所有権だけでなく「敷地権(土地の共有持分)」もあわせて登記されているか確認が必要です。敷地権が設定されていれば建物の登記をすれば土地も連動しますが、古いマンションでは敷地権が設定されていないケースもあります。

まとめ:まず「実家の登記状況を確認する」ことから始めよう

2024年4月から始まった相続登記の義務化は、「親や祖父母名義のままの不動産がある」という家庭にとって、まさに他人事ではない話です。改めてポイントを整理します。

  • ✅ 相続登記は相続を知った日から3年以内に義務あり
  • 2024年4月以前の相続も対象(猶予期限:2027年3月31日)
  • ✅ 違反すると10万円以下の過料
  • ✅ 遺産分割がまとまらない場合は相続人申告登記で義務を回避できる
  • ✅ 費用目安は登録免許税(評価額×0.4%)+司法書士報酬(5〜15万円)
  • ✅ 放置すると数次相続で手続きがより複雑・高額になる

まず今日できる一歩は、「実家(親の不動産)の登記事項証明書を法務局で取得する」ことです。1枚600円で取れます。そこで名義人を確認し、亡くなった方の名義のままになっていれば、早めに司法書士への相談を検討してください。

私たちも現在、義祖父名義の不動産について司法書士に相談中です。「昔のことだから」と後回しにしてきた分、戸籍の収集だけで相当手間がかかっています。同じ思いをしてほしくないので、心当たりのある方はぜひ早めに動いてみてください。

実家の相続全般については実家の相続はどうする?もあわせてご参照ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 相続登記は自分でできますか?

A. できます。法務局の窓口で相談しながら進める方も多いです。ただし、相続人が複数いたり複数の不動産がある場合は複雑になるため、司法書士への依頼も検討しましょう。

Q. 3年の期限を過ぎてしまったらどうなりますか?

A. 直ちに罰則が科されるわけではなく、法務局からの催告・通知を経て手続きが進みます。ただし「正当な理由がない場合」は10万円以下の過料の対象になります。期限を過ぎていても、できるだけ早く手続きを進めてください。

Q. 親が認知症で遺産分割協議ができない場合は?

A. 認知症などで判断能力が不十分な相続人がいる場合、成年後見制度を利用して後見人を選任し、後見人が代わりに遺産分割協議に参加する方法があります。詳しくは成年後見制度とは?をご覧ください。

Q. 相続した不動産を売却したい場合も登記が必要ですか?

A. はい。不動産の売却には所有者(登記名義人)が手続きに関わる必要があるため、まず相続登記で名義変更を済ませてから売却することになります。名義変更前に売却することは原則できません。

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義祖母が2024年に90歳を迎えたことをきっかけに、相続・後見・葬儀を家族で一から調べ始めました。最初は「相続税ってそもそもいくらから払うの?」というレベルで、法務局に電話して手続きを確認したり、銀行の窓口で口座凍結の話を聞いたりしながら少しずつ知識を積み上げました。弁護士でも税理士でもありませんが、「同じ状況の家族が調べたらこうなった」という記録として、費用・期限・手順を具体的に書くことを大切にしています。
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