相続・遺産手続き

実家の相続はどうする?売る・住む・貸す・放置の選択肢を整理

実家の相続を考えるイメージ
木田健太郎

義祖母の終活を考え始めてから、「実家はどうなるんだろう」という不安が頭をよぎるようになりました。兄弟がいる家庭では「実家の相続」がトラブルの火種になりやすいと聞きます。

この記事では、親が亡くなった後の実家の扱い方——売る・住む・貸す・放置の4つの選択肢のメリット・デメリットと、相続税・空き家リスクについて整理します。

実家の相続で最初に決めること

誰が相続するのかを先に決める

実家(土地・建物)の相続では、まず「誰が相続人になるか」「どう分けるか」を決める必要があります。相続人が複数いる場合(子どもが兄弟で複数人など)、遺言書がなければ遺産分割協議で全員が合意する必要があります。

問題になりやすいのが「共有名義」での相続。「兄弟で半分ずつ」と分けた場合、その後の売却・賃貸・リフォームに全員の同意が必要になり、意見が合わなければ身動きがとれなくなります。

不動産の価値を調べる

実家の価値(時価)を把握するために、以下の方法を使います:

  • 固定資産税評価額:毎年届く納税通知書に記載。実際の市場価格の7割程度の目安
  • 路線価:国税庁の路線価図で確認。相続税評価の基準(実勢価格の8割程度)
  • 不動産会社の査定:複数社に無料査定を依頼すると実勢価格の目安がわかる

選択肢1:実家を売る

メリット

  • 現金化できるので、複数の相続人で公平に分けやすい
  • 固定資産税・維持管理費がかからなくなる
  • 遠方に住んでいる場合、管理の手間がなくなる

デメリット

  • 思い出の家がなくなる(精神的な抵抗感)
  • 売却には時間がかかる(数ヶ月〜1年以上)
  • 売却益が出た場合、譲渡所得税が発生する

売却時の税金:「3,000万円特別控除」を忘れずに

相続した実家を売却する場合、空き家の特例(3,000万円特別控除)を使えることがあります。1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された旧耐震基準の家屋(一定の要件あり)を相続して売却する場合、譲渡所得から3,000万円が控除されます。

参考:国税庁:被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除

また、相続してから3年以内に売却した場合、「取得費加算の特例」により相続税額の一部を取得費に加算でき、税負担を減らせる可能性があります。

選択肢2:誰かが住む(継続使用)

メリット

  • 家が維持でき、思い出を保てる
  • 固定資産税の「住宅用地特例」(住宅用地は評価額が最大1/6に減額)が継続適用される
  • 小規模宅地等の特例」が使える場合、相続税評価額が最大80%減額される

小規模宅地等の特例とは

被相続人が住んでいた自宅の土地(特定居住用宅地)を一定の要件を満たす相続人が取得した場合、330㎡まで評価額が80%減額されます。これは相続税を大きく下げられる重要な特例です。

要件(主なもの):

  • 配偶者が取得する場合:無条件で適用
  • 同居していた子どもが取得する場合:相続後も引き続き住むこと
  • 別居の子どもが取得する場合:持ち家がない・一定期間住んでいないなど(「家なき子特例」)

参考:国税庁:小規模宅地等の特例

デメリット

  • 固定資産税・火災保険・修繕費などの維持コストがかかり続ける
  • 住む人が老朽化した建物を維持しなければならない
  • 兄弟間で「誰が住むか」でもめることがある

選択肢3:実家を貸す(賃貸)

メリット

  • 毎月の家賃収入が得られる
  • 建物が使用されることで維持状態が保たれる
  • すぐに売却しなくてよいので、時間をかけて判断できる

デメリット

  • リフォーム・修繕費が発生することがある(入居前の状態整備)
  • 空き家特例(3,000万円控除)が使えなくなる場合がある
  • 空室リスク・入居者トラブルのリスクがある
  • 管理会社に委託すると家賃の5〜10%の管理費がかかる

賃貸に出す前に確認すること

  • 築年数・耐震性(旧耐震基準の建物は耐震改修が必要な場合も)
  • 設備の状態(水回り・電気・ガス)
  • 借地借家法の理解(一度貸すと簡単には戻せない)

選択肢4:放置する(空き家)

空き家は持っているだけでリスクがある

「すぐには決められないから」と実家を放置しておくのは、実はリスクが大きい選択です。2023年施行の「空家等対策特別措置法」の改正により、管理不全な空き家は自治体から「管理不全空き家」に指定され、固定資産税の優遇(住宅用地特例)が解除されるようになりました。

つまり、放置すると固定資産税が最大6倍になる可能性があります。さらに、倒壊・火災・不審者侵入などのリスクも高まります。

空き家バンクや自治体の活用

地方の実家で売れない・貸せない場合は、市区町村が運営する「空き家バンク」への登録も選択肢です。また、自治体によっては空き家の解体費用の補助制度もあります。

実家の相続で兄弟間トラブルを防ぐには

「共有名義」を避ける

最も多いトラブルが、実家を兄弟で「共有名義」にした後に意見が割れるケースです。「売りたい兄」vs「売りたくない妹」で、法的な解決(共有物分割請求など)が必要になることも。できるだけ一人の名義にすることをおすすめします。

代償分割を活用する

例えば長男が実家を相続し、他の兄弟に相応の金額を払う(代償分割)方法は、共有名義を避けながら公平に分配できる有効な方法です。

生前に親の意思を確認しておく

「実家は誰に継いでほしいか」という親の意思を生前に確認し、遺言書に残してもらうことが、相続トラブルを防ぐ最善策です。

まとめ

実家の相続は「売る・住む・貸す・放置」の4択ですが、それぞれに税制上のメリット・デメリット、維持コスト、感情的な問題が絡み合います。

特に注意してほしいのは、「何もしないこと(放置)」がリスクになるという点。空き家問題は年々深刻になっており、法律も厳しくなっています。親が亡くなる前から「実家をどうするか」を家族で話し合っておくことが、最大の備えです。

相続税の計算方法については「相続税はいくらからかかる?計算方法と基礎控除をわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。

ABOUT ME
家族の終活ノート
家族の終活ノート
終活ブロガー
義祖母が2024年に90歳を迎えたことをきっかけに、相続・後見・葬儀を家族で一から調べ始めました。最初は「相続税ってそもそもいくらから払うの?」というレベルで、法務局に電話して手続きを確認したり、銀行の窓口で口座凍結の話を聞いたりしながら少しずつ知識を積み上げました。弁護士でも税理士でもありませんが、「同じ状況の家族が調べたらこうなった」という記録として、費用・期限・手順を具体的に書くことを大切にしています。
記事URLをコピーしました