相続・遺産手続き

遺言書の書き方と種類|自筆証書・公正証書の違いと正しい作り方

遺言書の書き方と種類|自筆証書・公正証書の違いと正しい作り方
木田健太郎

「遺言書を書いた方がいいとはわかっているけど、どうやって書けばいいか全然わからない」——義祖母の終活を手伝いながら、同じ壁にぶつかりました。

調べてみると、遺言書には3種類あり、それぞれに書き方・費用・有効性が大きく異なることがわかりました。形式を一つでも間違えると無効になるという落とし穴もあります。この記事では、遺言書の種類・書き方・注意点を整理します。

なぜ遺言書が必要なのか

遺言書がないと「遺産分割協議」が必要になる

遺言書がない場合、亡くなった後に相続人全員で話し合って遺産の分け方を決める「遺産分割協議」が必要になります。全員が合意しなければ手続きが進まず、一人でも反対する相続人がいれば調停・審判に発展することもあります。

遺言書があれば、基本的にその内容が優先されます(遺留分を侵害しない範囲で)。「誰に何を残すか」を明確に記しておくことで、残された家族の負担と争いを大幅に減らせます。

遺言書が特に重要なケース

  • 子どもが複数いる(特に不動産など分けにくい財産がある)
  • 再婚・離婚歴があり、複雑な家族関係がある
  • 特定の子ども(介護してくれた子など)に多く残したい
  • 内縁の配偶者や友人など、法定相続人以外に財産を残したい
  • 事業を特定の人に継がせたい

2026年の法改正で遺言のルールも変わる

2026年6月に成立した改正民法で、遺言の制度も見直されました。主な変更点は次の2つです。

  • 自筆証書遺言などの押印が不要に:公布(2026年6月24日)から1年以内に施行される予定です
  • 「保管証書遺言」の新設:パソコンなどで作成した遺言を法務局が保管する新しい方式で、検認は不要になる見込みです(公布から3年以内に施行予定)

施行されるまでは、この記事で紹介している今のルールが適用されます。最新の情報は法務省のページで確認してください。

遺言書の3種類:比較表

種類 作成方法 費用 証人 検認 安全性
自筆証書遺言 全文自書(手書き) ほぼ0円 不要 必要(法務局保管の場合は不要) △(形式ミスで無効リスク)
公正証書遺言 公証人が作成 数万〜十数万円 2人必要 不要 ◎(最も確実)
秘密証書遺言 自書+公証役場で認証 1万円程度〜 2人必要 必要 △(あまり使われない)

どの遺言書を選ぶ?

遺言書を作りたい
何を重視する?
確実さ

公正証書遺言公証人が作るので無効になりにくい。検認不要
費用の安さ

自筆証書遺言+法務局の保管制度保管料3,900円。検認不要
とにかく手軽に

自筆証書遺言(自宅で保管)紛失や形式の不備に注意。検認が必要

自筆証書遺言:費用ゼロで作れるが落とし穴も多い

書き方のルール(これを守らないと無効)

自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を必ず自分で手書きしなければなりません。パソコンで作成した本文は無効です(財産目録のみパソコン可・各ページに署名捺印が必要)。

必須要件:

  • 全文を自書(手書き):代筆・ワープロは不可
  • 作成年月日を明記:「○○年○月○日」(「○月吉日」などは無効)
  • 氏名を自書:署名は本名(通称でも可とされるが原則本名)
  • 捺印:認印可(実印が望ましい)
  • 訂正方法:訂正箇所に署名+訂正印が必要(修正液・修正テープは不可)

よくある無効パターン

  • 日付が「令和○年○月吉日」→ 無効
  • 財産の特定が不明確(「預金は長男に」→ どこの銀行か特定できない)
  • 捺印がない
  • 相続人の一人が代筆した

法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を活用する

2020年7月から、自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)に預けられる制度が始まりました。手数料は3,900円。預けると以下のメリットがあります:

  • 家庭裁判所の検認が不要になる
  • 紛失・改ざんのリスクがなくなる
  • 亡くなったあと、相続人は全国の法務局で遺言書の画像を見たり、内容の証明書(遺言書情報証明書)を受け取ったりできる
  • 希望すれば、亡くなったときに指定した人へ法務局から通知が届く

参考:法務省:自筆証書遺言書保管制度

公正証書遺言:最も確実で使いやすい

作成の流れ

  1. 相続人・財産内容を整理し、遺言の内容を決める(弁護士・司法書士に依頼するとスムーズ)
  2. 公証役場に予約を入れ、必要書類を準備する
  3. 証人2名と一緒に公証役場へ(証人は利害関係のない人。専門家に依頼可)
  4. 公証人が遺言者に内容を読み上げ・確認し、署名捺印
  5. 原本が公証役場に保管される

費用の目安

公証人手数料は遺産総額によって変わります(公証人手数料令に基づく):

遺産総額 公証人手数料
50万円以下 3,000円
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下 13,000円
1,000万円以下 20,000円
3,000万円以下 26,000円
5,000万円以下 33,000円
1億円以下 49,000円

手数料は財産を受け取る人ごとに計算して合計します。財産の合計が1億円以下のときは、さらに1万3,000円の「遺言加算」があります(2025年10月の改正後の金額。日本公証人連合会より)。弁護士・司法書士に作成を依頼する場合は、別途10〜30万円程度かかります。

2025年10月からは公正証書のデジタル化も始まり、病気などで公証役場に行けない事情があり、公証人が認めた場合は、ウェブ会議で公証人と面談して作成することもできるようになりました。

公正証書遺言の検索制度

公正証書遺言は、全国の公証役場でオンライン検索(日本公証人連合会の遺言検索システム)ができます。相続発生後に「遺言書があるかどうか」を確認できるため、見落としのリスクがありません。

遺言書に書けること・書けないこと

書けること(法律上有効な事項)

  • 財産の分配(誰に何を渡すか)
  • 相続分の指定・変更
  • 遺産分割方法の指定
  • 認知(婚外子を認知する)
  • 遺言執行者の指定
  • 祭祀(お墓・仏壇の継承者)の指定

書いても法的効力のないこと

  • 「仲良くしてほしい」などの精神的な願い(付言事項として書くことは可)
  • 遺言書の内容と矛盾する生前贈与の取り消し
  • 法定相続人の遺留分を侵害する内容(遺留分侵害額請求の対象になる)

自筆証書遺言のチェックリスト

本文をすべて手書き◎財産目録だけはパソコン可(各ページに署名・押印)
日付を特定できる形で書く◎「○月吉日」は無効
氏名を手書きし、押印する◎認印でもよいが、実印が安心
財産をはっきり特定する○銀行名・支店・口座番号まで
訂正は決まった方法で○修正液・修正テープは使わない

遺留分:最低限保障される相続分

遺留分とは

遺言書があっても、一定の相続人(配偶者・子ども・親)には「遺留分」という最低限の取り分が保障されています。遺留分を下回る遺言書を作っても、侵害された相続人から「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があります。

遺留分の割合(法定相続分の1/2が基本):

  • 配偶者:法定相続分の1/2
  • 子ども:法定相続分の1/2
  • 親(子どもがいない場合):法定相続分の1/3
  • 兄弟姉妹:遺留分なし

遺言書を書く前に準備すること

  • 財産リストを作成する:何を誰に渡すかを決めるために、まず財産の全容を把握する
  • 相続人を確認する:法定相続人が誰かを戸籍で確認する
  • 遺留分に配慮した分配を考える:特定の人に多く残す場合でも、他の相続人の遺留分を侵害しない設計にする
  • 遺言執行者を指定する:遺言書の内容を実行する人(弁護士・司法書士等)を指定しておくとスムーズ

まとめ:どの種類を選ぶべきか

迷ったら公正証書遺言を選ぶことをおすすめします。費用はかかりますが、形式上の無効リスクがなく、原本が公証役場に保管されるため最も確実です。

費用を抑えたい場合は、自筆証書遺言を法務局に保管する方法(3,900円)が現実的な選択肢です。いずれの場合も、司法書士・弁護士に一度相談することをおすすめします。

相続トラブルの防ぎ方については「兄弟間の相続トラブルを防ぐ3つの準備」も参考にしてください。

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義祖母が2024年に90歳を迎えたことをきっかけに、相続・後見・葬儀を家族で一から調べ始めました。最初は「相続税ってそもそもいくらから払うの?」というレベルで、法務局に電話して手続きを確認したり、銀行の窓口で口座凍結の話を聞いたりしながら少しずつ知識を積み上げました。弁護士でも税理士でもありませんが、「同じ状況の家族が調べたらこうなった」という記録として、費用・期限・手順を具体的に書くことを大切にしています。
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