喪中に獅子舞は迎えていい?断るときの張り紙とご祝儀、忌中の場合を解説
家族を亡くした年、毎年お正月や秋祭りに家へ回ってくる獅子舞の時期が近づいてきた。例年どおり迎えていいのか、それとも断るべきなのか。断るなら誰にどう伝えればいいのか、ご祝儀はどうするのか——。地域の行事だけに、ご近所の目も気になって迷ってしまう方は少なくありません。
結論をお伝えします。喪中に獅子舞を迎えてはいけないという全国共通の決まりはありません。獅子舞には「新年の祝い」の面と「厄払い」の面があり、忌明け後の喪中なら、迎えるか遠慮するかは家の気持ちで決めてかまいません。一方、亡くなって間もない忌中(仏式は四十九日、神式は五十日祭まで)は、遠慮する家が多いようです。獅子舞は神社の祭礼として回ることが多く、忌の間は神社への参拝を控えるとされているためです。
断る場合は、回ってくる前に町内会や保存会の世話人へ一言伝えるのがいちばん確実です。間に合わないときは玄関に張り紙をしておく方法もあります。この記事では、迎えるかどうかの考え方、断るときの伝え方と張り紙の例文、ご祝儀(花代)の扱い、自分や子どもが舞う側のときの判断、忌中と重なったときの考え方まで整理します。
結論:喪中・忌中の獅子舞の早見表
| 場面 | 忌中(四十九日・五十日祭まで) | 忌明け後の喪中 | 確認する相手 |
|---|---|---|---|
| 獅子舞が家に回ってくる | 遠慮する家が多い。事前に伝える | 迎えても遠慮してもよい(家で決める) | 町内会・保存会の世話人 |
| 家の中・玄関で舞ってもらう | 控える | 迎えるなら玄関先で短めに、などでもよい | 同上 |
| ご祝儀(花代)を包む | 迎えないなら不要 | 迎えるなら地域のふだんの形で | 世話人・班長 |
| 町内で集める祭りの寄付 | 見合わせを相談 | 地域の扱いに従う | 班長・会計 |
| 玄関の張り紙 | 事前に伝えられないときに | 遠慮したい場合だけ | — |
| 本人が保存会で舞う | 休むのが無難 | 保存会・神社の考えに従う | 保存会の代表・神社 |
| 子どもが子ども獅子に出る | 休む | 忌明け後は出られることもあるので、子ども会・保存会に確認を | 子ども会・保存会 |
※法律や全国共通の決まりはなく、一般的な考え方をまとめたものです。地域・保存会・神社によって扱いが違います。
なぜ獅子舞は喪中に迷いやすいのか
獅子舞には「新年の祝い」と「厄払い」の2つの面がある
獅子舞は、獅子頭(ししがしら)をかぶって舞う民俗芸能です。辞典では、五穀豊穣(ごこくほうじょう)の祈りや悪魔を払い清めるものとして各地の祭礼で行われていると説明されています。また、新年の祝い事の一つとして、笛や太鼓ではやしながら家々を舞い歩くものも獅子舞と呼ばれ、俳句では新年の季語にもなっています。正月に家々の門口を回る獅子舞は、太神楽(だいかぐら)を起源とすると説明されており、今日の獅子舞の多くは悪魔払いの役割を担っているとされます(コトバンク「獅子舞」)。
さらに、地域によってはお盆の供養や年忌の供養に踊られる獅子(鹿踊・三匹獅子舞など)もあります(コトバンク「獅子舞」)。獅子舞は「お祝いだけの行事」ではないのです。
そのため、「お祝いの行事だから喪中は控えたい」と考える人もいれば、「厄払いだからこそ、家族を亡くした年に迎えたい」と考える人もいます。喪中の獅子舞で意見が分かれるのは、このためです。
獅子舞の2つの顔:喪中に意見が分かれる理由
喪中に控えるとされるのは「新年を祝うこと」
日本郵便の解説では、お正月行事はお祝い事にあたるため、喪中は門松やしめ縄などの正月飾り、鏡餅、おせち料理の用意を控え、年賀の挨拶も慎むとされています。また、喪中は法律で決まっているものではなく、現在は喪に服する期間を定める法律もないと説明されています(日本郵便「喪中はがきの範囲と時期」)。
ここで挙げられているのは「新年を祝う準備や挨拶」で、獅子舞を迎えてはいけない、という決まりはどこにもありません。正月飾りやおせちなど、喪中のお正月全体の過ごし方は喪中の正月はどう過ごす?で解説しています。
忌中は「神社の神事」を控える期間
神道の考え方では、亡くなってからの期間を「忌(き)」と「服(ぶく)」に分けます。神社本庁は、地域に慣例がある場合はその慣例に従うのが適切とし、特に慣例がない場合は五十日祭までを「忌」、一年祭(一周忌)までを「服」とするのが一般的としています。忌の期間には神社の参拝や家庭でのおまつり(神棚のおまつり)も控える必要があり、50日を過ぎれば原則として再開しても差し支えないとされています(神社本庁「服忌について」)。
家々を回る獅子舞は、神社の祭礼として行われる地域も多く、忌中は獅子舞も遠慮する家が多いようです。忌中の神棚の扱いは神棚封じのやり方は?をご覧ください。
上のとおり、神社本庁も地域に慣例があればそれに従うのが適切としています。忌明け後の扱いは地域ごとに違う、と考えておくとよいでしょう。
家に回ってくる獅子舞はどうする?
忌明け後の喪中なら、迎えるかどうかは家で決めてよい
四十九日や五十日祭を過ぎていれば、獅子舞を迎えるか遠慮するかは、家族の気持ちで決めてかまいません。迎える場合は、例年どおりにする家もあれば、玄関先で短めに舞ってもらい家の中には上がってもらわない、といった控えめな形にする家もあります。どちらが正しいということはありません。
「故人が毎年楽しみにしていた」「子どもが楽しみにしている」「家族を亡くした年だからこそ厄を払ってもらいたい」という理由で迎える家もあります。
お寺の住職の見解の一つとして、香川県丸亀市にある真宗興正派(浄土真宗)の円龍寺のラジオでは、住職が「神社の獅子舞の行事に参加してよい」「家に来た獅子には家の中で舞ってもらってよい」と答えています。ただし同時に、獅子舞は神事の行事なので、喪中や忌中の扱いは神社の神職や氏子に聞くのがよいとも述べています(円龍寺「香川の獅子舞と喪中の参加【ラジオ#13】」)。あくまで浄土真宗のお寺としての考え方として受け止めてください。
忌中なら、前もって遠慮を伝える
忌中に獅子舞の時期が重なったときは、回ってくる日より前に、町内会や保存会の世話人、獅子舞の担当の方に「今年は忌中なので」と一言伝えておきましょう。葬儀を知っている世話人が配慮してくれることもありますが、すべての家の事情が伝わっているとは限りません。自分から伝えておけば、当日玄関で断る気まずさがなくなります。伝え方の例文は、後半の「断るときの伝え方と玄関の張り紙」で紹介します。
神社や保存会とは関係のない獅子舞が来たとき
人家の門口で芸能を見せ、金品を受け取る芸を「門付(かどづけ)」といい、正月の門付芸としての獅子舞もあります(コトバンク「門付」、コトバンク「獅子舞」)。地元の神社や保存会とは別に回ってくる獅子舞で、どこの団体か分からない場合は、「喪中ですので、今年はご遠慮します」と伝えて断ってかまいません。
ご祝儀(花代)はどうする?
迎えるなら、地域のふだんの形で渡す
獅子舞に来てもらった家が、ご祝儀を渡す地域があります。たとえば福岡県久留米市の田主丸(たぬしまる)の獅子打ち(正月ではなく夏の7〜9月に行われます)では、自治会内の各家を巡り、玄関先で獅子打ちをして「お花」(ご祝儀)を受け取ると紹介されています(祈る、田主丸。「獅子舞/獅子打ち」)。
金額や渡し方は、地域や町内で決まっていることが多いものです。喪中の年に迎える場合も、例年どおりの形で渡せば問題ありません。初めてで分からないときは、世話人やご近所に聞くのが確実です。
喪中のときの袋と表書き
表書きは、「御花」「御祝儀」など、その地域で使われているものに合わせるのが基本です。喪中であることが気になる場合は、紅白の祝儀袋を避けて、白い封筒に「御礼」と書いて渡す家もあります。どちらにするか迷ったら、世話人に「喪中なのですが、いつもの袋でよいでしょうか」と聞いてみてもよいでしょう。なお、獅子舞を遠慮して来てもらわない場合は、ご祝儀は包まないのが一般的です。
町内でまとめて集める祭りの寄付・奉納金の場合
家ごとに渡すご祝儀とは別に、祭りの寄付や奉納金を町内でまとめて集める地域もあります。こちらは見合わせるかどうかを班長や会計の方に相談しましょう。寄付の種類ごとの考え方や、班長への伝え方は喪中に秋祭りの役員や寄付はどうする?で解説しています。
断るときの伝え方と玄関の張り紙
いちばん確実なのは事前に世話人へ伝えること
当日、玄関で断るのはお互いに気まずいものです。回ってくる日の前に、世話人や町内会の担当の方へ口頭や電話、メッセージで伝えておきましょう。
【忌中で遠慮したいとき】
いつもお世話になっております。〇〇(地区・班)の〇〇です。
実は〇月に父が亡くなり、今年は忌中のため、獅子舞にお越しいただくのは遠慮させていただけますでしょうか。毎年ありがとうございます。皆さまによろしくお伝えください。
【忌明け後で、控えめに迎えたいとき】
喪中ではありますが、例年どおり玄関先で舞っていただければ、と家族で話しております。よろしくお願いいたします。
玄関の張り紙の例文
事前に伝えられなかったときや、当日家を空けるときは、玄関に張り紙をしておく方法もあります。張り紙に決まった書き方はありません。白い紙や半紙に短く書いて、獅子舞が回る日だけ貼り、終わったら外しましょう。
喪中につき 獅子舞はご遠慮申し上げます
忌中につき 今年の獅子舞はご辞退申し上げます 〇〇家
喪中のため、本年はお祝いを控えさせていただきます
張り紙で気をつけること
- 留守を知らせる書き方は避ける:「不在のため」などと書くと、家を空けていることが外から分かってしまいます。
- 故人の名前や続柄は書かなくてよい:「喪中につき」「忌中につき」だけで十分に伝わります。
- 「忌中」と「喪中」の使い分け:忌中の間なら「忌中」、忌明け後なら「喪中」と書く家が多いようです。
自分や子どもが獅子舞に参加する場合
保存会で舞う側のとき
獅子舞は神社に奉納される神事として行われることが多いため、忌中は休むのが無難です。忌明け後は、保存会や神社の考え方に従いましょう。喪中の人の参加を控えてもらう地域もあれば、気にしない地域もあります。前述の円龍寺のラジオでも、地域によっては参加を断られることもあるので、神社の神職や氏子に尋ねてほしいと述べられています(円龍寺「香川の獅子舞と喪中の参加」)。まずは保存会の代表に相談してみてください。
〇〇さん、いつもお世話になっています。
先日祖母が亡くなり、今は忌中のため、今年の獅子舞は休ませていただけますか。
忌明け後の練習や片付けで手伝えることがあれば、声をかけてください。
子ども獅子・子ども会で出るとき
子ども獅子や子ども会の獅子舞も、考え方は子ども神輿と同じです(喪中に秋祭りの役員や寄付はどうする?の子ども神輿・子ども会の節もご覧ください)。忌明け後は出られることもあるので、子ども会や保存会に確認しておくと安心です。
出られない年は、子どもには「今年はお休みの年なんだよ。来年また出ようね」と短く伝えれば十分です。
獅子に頭を噛んでもらうのは?
獅子に頭を噛んでもらうことには、厄払いや健やかな成長の願いが込められているといわれます。田主丸の獅子打ちでも健やかな成長を願って赤ちゃんの頭を甘噛みする様子が紹介されています(祈る、田主丸。「獅子舞/獅子打ち」)。見物先で頭を噛んでもらうこと自体を禁じる決まりはありません。忌中で神社の行事であれば控え、忌明け後なら家族の気持ちで決めればよいでしょう。
忌中に正月・秋祭りが重なるときは
忌明けの日を数えてみる
まずは、獅子舞が回ってくる日が忌中にあたるかどうかを確かめましょう。仏式では四十九日法要をもって忌明けとする例が多く(天台宗「葬儀と供養について」)、神式では地域に慣例がなければ五十日祭までが忌とされています(神社本庁「服忌について」)。忌明けの日の数え方は、忌中と喪中で初詣に行くルールはどう違うか?で詳しく解説しています。
亡くなってからの1年と、獅子舞への向き合い方
- 亡くなった日忌中に入る神棚のおまつりや神社への参拝を控える期間が始まる
- 〜四十九日・五十日祭まで(忌中)獅子舞は遠慮する家が多い回ってくる前に世話人へ一言。舞う側も休むのが無難
- 四十九日・五十日祭(忌明け)神社の参拝やおまつりを再開してよいとされる
- 忌明け〜一周忌・一年祭(喪中)迎えるかどうかは家で決めてよい迎えるなら玄関先で短めに、などの形も。舞う側は保存会に確認
- 一周忌・一年祭のあとふだんどおりに戻す家が多い地域の慣例があればそれに従う
正月・秋祭りの獅子舞と忌中が重なったら
年末に家族を亡くした場合など、忌中のうちにお正月を迎えることもあります。正月飾りもしない年なので、獅子舞も遠慮する家が多いでしょう。神棚封じをしている間は、なおさら神事にあたる獅子舞は控えるのが自然です(神棚封じのやり方は?)。秋祭りの場合も同じで、回ってくる前に世話人へ伝えておきましょう。祭りの役員や寄付の扱いもあわせて気になる方は、喪中に秋祭りの役員や寄付はどうする?をご覧ください。
よくある疑問
浄土真宗やお寺の檀家でも関係ある?
円龍寺のラジオでは、浄土真宗には喪中・忌中の考えはないと説明されています(円龍寺「香川の獅子舞と喪中の参加」)。ただし、獅子舞は神社の行事であることが多いので、扱いは神社や保存会に合わせると安心です。
去年亡くなった家(一周忌のあと)は、もう普段どおりに迎えていい?
神社本庁の目安では、慣例がなければ一年祭(一周忌)までが「服」の期間とされています(神社本庁「服忌について」)。一周忌を過ぎていれば、普段どおりに戻す家が多いでしょう。地域に慣例があれば、それに従ってください。
喪中の家だと知られずに、獅子舞が来てしまったら?
玄関で「喪中なので、今年は遠慮させていただきます」と伝えれば十分です。そのまま舞ってもらった場合は、ご祝儀はふだんどおり渡せばよいでしょう。来てしまったことを気に病む必要はありません。
同居していない祖父母が亡くなった場合は?
日本郵便の解説では、喪中の範囲は2親等程度までが目安とされる一方、同居していない場合などは喪に服さない人もいると説明されています(日本郵便「喪中はがきの範囲と時期」)。別居の祖父母であれば、家としては普段どおりに獅子舞を迎える家もあります。家族で話して決めましょう。
あわせて読みたい
まとめ
喪中・忌中の獅子舞についてのポイントを整理します。
- 決まりはない:喪中に獅子舞を迎えてはいけないという全国共通の決まりはない
- 忌明け後の喪中は家の気持ちで:迎えても遠慮してもよい。迎えるなら玄関先で短めに、などの形も
- 忌中は遠慮する家が多い:断るなら事前に世話人へ。間に合わなければ玄関に張り紙を
- ご祝儀(花代):迎えるなら地域のふだんの形で。断るなら包まなくてよい
- 舞う側・子ども獅子:忌中は休み、忌明け後は保存会・神社に確認
獅子舞は、家の厄を払い、一年の無事を願う行事でもあります。決まりに縛られすぎず、家族の気持ちと地域の考え方の両方を大切にして決めれば、それで十分です。迷ったときは、ひとりで悩まずに世話人や神社に一言相談してみてください。
