介護・後見

親の介護費用は誰が払う?親のお金で払う基本と兄弟の分担、相続での扱いを解説

親の介護費用は誰が払う?親のお金で払う基本と兄弟の分担、相続での扱いを解説
木田健太郎

親の介護が始まると、気になるのがお金のことです。施設に入るとなれば毎月の費用がかかるし、在宅でもおむつや介護サービスの費用が積み重なっていく。親の年金で足りなければ、誰が払うのか。兄弟で分けるとしたら、どう分ければいいのか——。

結論をお伝えします。介護費用は、まず親自身の年金や貯金から出すのが基本です。子どもには親を扶養する義務がありますが、それは自分の生活を維持したうえで、余力の範囲で助けるというものです。足りない場合は、公的な制度で負担を減らしたうえで、兄弟で話し合って分担します。そして、誰がいくら出したかを記録しておくことが、のちの相続でもめないための大切な備えになります。

この記事では、介護費用の目安、親のお金の管理のしかた、負担を減らす制度、兄弟での分け方、相続での扱い、税金の控除まで、順に整理します。

結論:親の介護費用 早見表

項目 考え方
誰のお金で払う? まずは親自身の年金・貯金から
子どもの義務 自分の生活を維持したうえで、余力の範囲で助ける
負担を減らす制度 高額介護サービス費・負担限度額認定・医療費控除など
兄弟の分担 話し合いで決める。まとまらなければ家庭裁判所の調停
相続との関係 負担した分は、遺言や兄弟の合意、寄与分などで調整する

介護費用はどのくらいかかる?

生命保険文化センターの調査(2024年度)によると、介護にかかった費用の平均は次のとおりです。

項目 平均
一時的な費用(住宅の改修・介護ベッドの購入など) 約47.2万円
毎月の費用 約9.0万円(在宅は約5.3万円、施設は約13.8万円)
介護の期間 約55か月(4年7か月)

単純に計算すると、合計で500万円を超えることになります。介護は何年続くか分からないため、「月々いくらまでなら続けられるか」を最初に考えておくことが大切です。

介護費用は親のお金から払うのが基本

介護費用はこの順番で考える

① 親の年金と貯金でまかなう介護費用は本人のお金から出すのが基本
② 公的な制度で負担を減らす高額介護サービス費・負担限度額認定・医療費控除など
③ 足りない分を子どもで分担する誰がいくら出したか記録を残す
④ 相続のときに精算する遺言や兄弟の合意で、負担した人に報いる

子どもの扶養義務は「余力の範囲」

民法では、親子や兄弟姉妹はお互いに扶養する義務があるとされています(民法877条)。ただし、親に対する子の扶養義務は、自分や自分の家族の生活を維持したうえで、余力があれば助けるという性質のものです。自分の生活を犠牲にしてまで払わなければならない、というものではありません。

親のお金を子が管理するときは記録を残す

親の口座から介護費用を払うために、子どもがお金を管理することもよくあります。このとき大切なのが、何にいくら使ったかの記録です。レシートや領収書を取っておき、簡単な家計簿をつけておくと、あとで兄弟から「使い込んだのでは」と疑われるのを防げます。

本人が窓口に行けない場合は、金融機関の「代理人カード」や「代理人届」を利用できることがあります。

認知症に備えて、元気なうちに準備を

親が認知症になると、本人の口座からお金を引き出したり、実家を売って施設の費用にあてたりすることが難しくなります。元気なうちに、家族信託や任意後見の準備をしておくと安心です。詳しくは親が認知症になったら財産はどうなる?で解説しています。

足りないときは、まず公的な制度で負担を減らす

  • 高額介護サービス費:介護サービスの自己負担が月の上限(一般的な所得の世帯で月4万4,400円など)を超えた分が戻ってくる
  • 高額医療・高額介護合算療養費制度:1年間の医療費と介護費の自己負担の合計が、上限を超えた分が戻ってくる
  • 負担限度額認定(補足給付):所得や預貯金が一定以下なら、施設の食費・居住費が軽くなる
  • 医療費控除:医療系の介護サービスや施設の費用の一部は、医療費控除の対象になる

いずれも申請が必要なものがほとんどです。ケアマネジャーや市区町村の介護保険の窓口で、使える制度がないか確認しましょう。施設の費用の目安は老人ホームの費用と選び方でまとめています。

兄弟で分担するときのポイント

まず親のお金の状況を見える化する

分担を話し合う前に、親の年金額・貯金・毎月の介護費用を一覧にして、兄弟で共有しましょう。「いくら足りないのか」が分かれば、話し合いは具体的になります。

「お金を出す人」と「手を動かす人」で分けてもよい

近くに住む兄弟が実際の介護を担い、遠方の兄弟が費用を多めに出す、という分け方もよくあります。介護の手間も負担の一つなので、お金だけで割り切らず、全体として公平かどうかで考えると話がまとまりやすくなります。

話し合いがまとまらないときは

どうしても分担が決まらない場合は、家庭裁判所の扶養請求調停を利用できます。調停委員が間に入り、それぞれの収入や生活状況をふまえて話し合いを進めます。兄弟間のトラブルを防ぐ考え方は、兄弟間の相続トラブルを防ぐ3つの準備も参考にしてください。

介護で負担した分は、相続でどう扱われる?

介護した・お金を出した人が報われる方法

タイミングできること
親が元気なうち→遺言で、介護を担う子に多めに残してもらう
介護の期間中→負担した金額を記録し、兄弟で精算の方法を合意しておく
相続のとき(相続人)→寄与分を主張する(認められるには証拠が必要)
相続のとき(相続人以外の親族)→特別寄与料を請求する(知ってから6か月以内)

寄与分は認められるハードルが高い

親の介護をしたり費用を負担したりした相続人は、相続のときに「寄与分」として多めに受け取れる可能性があります。ただし、家族として当たり前の範囲の手助けは寄与分にあたらないとされ、認められるハードルは高いのが実情です。認めてもらうには、介護の記録や支払いの記録が欠かせません。

相続人でない親族は「特別寄与料」

長男の妻など、相続人ではない親族が無償で介護をしていた場合は、相続人に対して「特別寄与料」を請求できます(2019年7月から)。話し合いがつかないときは家庭裁判所に申し立てますが、相続が始まったことと相続人を知ってから6か月以内、または相続開始から1年以内という期限があります。

いちばん確実なのは、親に遺言を書いてもらうこと

介護を担った子に多めに残したいという親の意思は、遺言にしておけば確実に伝わります。親が元気なうちに家族で話し合い、遺言を書いてもらうことが、もっとももめにくい方法です。遺言の書き方は遺言書の書き方と種類で解説しています。

介護費用と税金の控除

医療費控除は、生計を一にしていれば子がまとめて申告できる

子どもが親の医療費や介護費用を払っていて、親と生計を一にしている場合は、子どもの医療費控除にまとめて申告できます。別居していても、仕送りなどで生活を支えていれば「生計を一にしている」と認められることがあります。対象になる介護費用の範囲は、国税庁 No.1127で確認できます。

親を扶養に入れられることも

親の所得が一定以下で、生計を一にしている場合は、扶養控除を受けられることがあります。所得の要件は2025年分から合計所得58万円以下に引き上げられ、65歳以上で年金収入だけなら年168万円以下が目安です。要件は税制改正で変わることがあるので、最新の情報は国税庁 No.1180で確認してください。

よくある疑問

義理の親の介護費用も払う義務がある?

法律上、扶養の義務があるのは親子や兄弟姉妹などの血のつながった家族です。配偶者の親(義理の親)に対しては、家庭裁判所が特別な事情を認めた場合を除いて、扶養の義務はありません。ただ、実際には夫婦で話し合って支えている家庭が多いでしょう。

親の年金が少なく、子どもにも余裕がない

まずは市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談してください。負担限度額認定で施設の費用が軽くなったり、費用の安い特別養護老人ホームを検討したりと、方法はあります。状況によっては生活保護を利用できる場合もあります。

介護のために仕事を休むことになったら?

介護休業を取れば、雇用保険から賃金の67%の給付金が出ます。仕事を辞める前に、介護休業や介護休暇などの制度を確認しましょう。詳しくは親の介護で仕事を休むには?介護休業と介護休暇の違いで解説しています。

まとめ

親の介護費用についてのポイントを整理します。

  • 介護費用の目安:月約9万円、期間は平均4年7か月。合計で500万円を超えることも
  • 払う順番:親の年金・貯金 → 公的な制度で負担を減らす → 足りない分を兄弟で分担
  • 子どもの義務:自分の生活を維持したうえで、余力の範囲で助ける
  • 記録を残す:親のお金を管理するときも、自分が負担するときも、何にいくら使ったか残しておく
  • 相続での調整:遺言・兄弟の合意・寄与分・特別寄与料で、負担した人に報いることができる

介護のお金の話は、親が元気なうちほど切り出しにくいものです。ですが、いざ始まってからでは、親の意思を確認できなくなることもあります。年金や貯金のこと、どこで介護を受けたいかを、家族で少しずつ話し合っておきましょう。

ABOUT ME
家族の終活ノート
家族の終活ノート
終活ブロガー
義祖母が2024年に90歳を迎えたことをきっかけに、相続・後見・葬儀を家族で一から調べ始めました。最初は「相続税ってそもそもいくらから払うの?」というレベルで、法務局に電話して手続きを確認したり、銀行の窓口で口座凍結の話を聞いたりしながら少しずつ知識を積み上げました。弁護士でも税理士でもありませんが、「同じ状況の家族が調べたらこうなった」という記録として、費用・期限・手順を具体的に書くことを大切にしています。
記事URLをコピーしました