終活の基礎知識

親の終活、何から始める?家族がやるべきことを順番に整理した

家族で終活を考えるイメージ
木田健太郎

「そろそろ終活を考えないといけないな」と思いながら、どこから手をつければいいか分からない——私もそのひとりでした。

義祖母が90歳を迎えた年、家族で集まったとき「終活の話をしておいた方がいいよね」という空気になりました。でも、いざ話し合おうとすると、何から始めればいいのか誰もわからない。「エンディングノート?」「遺言書?」「財産の整理?」頭の中にキーワードはあっても、順番や優先度がさっぱりつかめませんでした。

この記事では、私が義祖母の終活準備をサポートするなかで学んだことをもとに、家族として取り組むべきことを順番に整理します。専門家ではないからこそ、「同じ立場の人が最初に知りたかったこと」を書けると思っています。

終活とは何か?「死の準備」じゃなくて「生きるための整理」

終活と聞くと「死ぬ準備をする暗い作業」というイメージを持つ人が多いですが、実際は違います。終活の本質は「残された家族が困らないよう、自分の情報・意思・財産を整理しておくこと」です。

義祖母に終活の話を切り出したとき、最初は「縁起でもない」と嫌がりました。でも「おばあちゃんが元気なうちに聞いておかないと、私たちが困るんだよ」と伝えたら、少しずつ話してくれるようになりました。終活は本人のためだけでなく、家族のためでもある——そう伝えると受け入れてもらいやすくなります。

終活を早めに始める3つのメリット

  • 認知症になる前に意思を記録できる:どこの病院にかかりたいか、延命治療はどうするか、葬儀の希望は何か——これらは本人が明確な意思を持てるうちに記録しておかないと、後から家族が判断することになります。
  • 相続トラブルを予防できる:財産の把握と意思表示(遺言書など)が整っていれば、兄弟姉妹間のトラブルを大幅に減らせます。「もめた」という話を周囲で何件も聞いたので、これは重要だと実感しています。
  • 本人が安心して過ごせる:「整理できた」という安心感は、本人の精神的な余裕にもつながります。義祖母も、エンディングノートを書き終えたあと「これで心配が減った」と言っていました。

終活は何歳から始めるべきか

「まだ早い」と思いがちですが、終活に「早すぎる」はありません。厚生労働省のデータによると、認知症の発症率は75歳以降から急増します(85〜89歳では約4割が認知症)。義祖母のように90歳を超えてから始めると、本人の意思確認が難しくなっていることがあります。

60代〜70代前半が理想的な開始時期ですが、すでに親が80代・90代でも遅くはありません。「できることから、できる人が、できる範囲で」始めることが大切です。

終活でやるべきこと:5つのステップと優先順位

終活でやることは大きく5つに分かれます。全部いっぺんにやる必要はなく、優先度の高いものから順に取り組むのがコツです。

ステップ1(最優先):エンディングノートを書く

まず最初にやるべきことはエンディングノートの作成です。法的な効力はありませんが、「家族に伝えておきたいこと」を一冊にまとめるだけで、残された家族の負担が大幅に減ります。

書いておくべき主な内容:

  • 銀行口座・保険・年金など財産情報の一覧(通帳や証書の保管場所も)
  • 葬儀の希望(規模・宗教的なこと・呼んでほしい人)
  • お墓・納骨の希望(既にお墓がある場合は場所・連絡先)
  • 延命治療・臓器提供に関する意思
  • 介護が必要になったときの希望(在宅か施設か)
  • デジタル遺品の情報(SNS・メール・サブスクのID・パスワード)
  • 家族へのメッセージ

エンディングノートは書店・100均・文房具店などで購入でき、500〜3,000円程度です。書き方の詳細は「エンディングノートとは?書き方・選び方・家族への渡し方を解説」も参考にしてください。

ステップ2:財産・負債の把握

財産の全体像を把握することは、相続手続きをスムーズに進めるための基礎です。義祖母の場合、調べてみると「知らなかった銀行口座が3つあった」「20年前に解約したと思っていた保険がまだ生きていた」ということがありました。

確認すべき財産の種類:

  • 預貯金:銀行名・支店・口座番号。通帳と印鑑の保管場所
  • 不動産:土地・建物の登記簿謄本、固定資産税の納税通知書で確認
  • 生命保険:保険証券の保管場所、受取人の確認
  • 株式・投資信託:証券会社の口座情報
  • 負債:住宅ローン残高、その他の借入金(これを把握していないと相続放棄の判断ができない)

ステップ3:遺言書の準備(財産がある場合は特に重要)

遺言書は法的効力を持つ文書で、「誰に何を残すか」を本人の意思として記録できます。遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議をする必要があり、これが兄弟間トラブルの最大の原因になります。

遺言書には主に3種類があります:

種類 費用目安 特徴 向いているケース
自筆証書遺言 ほぼ0円 自分で書く。形式に不備があると無効になるリスク 財産がシンプルな場合
公正証書遺言 数万〜十数万円 公証役場で作成。最も確実 財産が複数・家族関係が複雑な場合
秘密証書遺言 1.1万円〜 内容を秘密にしたまま公証役場で認証 あまり使われない

ステップ4:医療・介護の意思確認

「延命治療を望むか」「どんな介護を受けたいか」は、本人が明確な判断能力を持つうちに確認しておく必要があります。義祖母は「できるだけ自宅にいたい」「無理な延命はしなくていい」と話してくれましたが、こういった意思を事前に把握しているかどうかで、いざというときの家族の決断の重さが全く変わります。

「尊厳死宣言書」「事前指示書」という形で書面に残しておくこともできます。かかりつけ医や地域包括支援センターに相談してみてください。

ステップ5:葬儀・お墓の希望を伝える

葬儀の費用・規模・形式(一般葬・家族葬・直葬)、お墓の場所と継承者——これらを事前に話し合っておくことで、亡くなった後の混乱を防げます。葬儀費用の相場と比較については「葬儀費用の相場と安く抑える方法【家族葬・直葬・一般葬の比較】」を参考にしてください。

財産を把握する具体的な方法

銀行口座の洗い出し方

銀行口座は「通帳を探す」だけでは見つからないことがあります。特に高齢者の場合、何十年も前に開設した口座が眠っている場合があります。以下の方法で確認してください:

  • 郵便物から確認(銀行からの利息通知・明細・カードの請求書)
  • 手帳やメモ帳を確認(通帳番号や印鑑の場所を書いていることが多い)
  • 財布の中のキャッシュカード・通帳を確認
  • 確定申告書の「利子所得」欄から推測

不動産の確認方法

不動産は、毎年5〜6月頃に届く固定資産税の納税通知書で確認できます。また、法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得することで、正確な情報を把握できます(1通につき600円程度)。

保険の確認方法

生命保険は保険証券の保管場所を聞いておきましょう。「生命保険契約照会制度」(一般社団法人生命保険協会)を利用すると、本人が被保険者となっている保険をまとめて照会できます(所定の条件あり)。参考:生命保険協会公式サイト

家族への切り出し方:こんなふうに話してみた

終活の話を切り出すのは、難しいですよね。「縁起でもない」と言われるのが怖くて後回しにしてしまう気持ち、よくわかります。私が実際にうまくいった声かけをいくつか紹介します。

「家族全員で話す場を作る」作戦

法事や盆・正月など、家族が集まる機会に「今日みんないるし、少しだけこういう話もしておこうか」と自然に切り出すのが一番スムーズでした。一対一で切り出すより、家族みんなで共有する流れにする方が、本人も構えずに話しやすいようです。

「自分も一緒にやる」と伝える

「おばあちゃんのだけじゃなくて、私もエンディングノートを書いてみようと思って」と自分の話にすると、「じゃあ私も」となりやすいです。終活が「老人がやるもの」ではなく「家族みんなでやるもの」という雰囲気を作ることが大切です。

「困るのは私たちだから」と正直に言う

「もし突然のことがあったとき、私たちが何も分からなくて困る。教えてほしいんだけど」と正直に伝えることで、本人も「家族のために話してあげよう」という気持ちになりやすいです。

よくある失敗と注意点

失敗1:財産を把握しないまま相続が始まる

財産の全容を把握しないまま亡くなると、相続手続きが大変になります。特に、知らない口座・保険・負債が後から発覚すると、分割協議をやり直す必要が出ることも。生前に整理しておくことが大切です。

失敗2:遺言書の形式ミスで無効に

自筆証書遺言は、書き方に厳格なルールがあります(全文自筆・日付・署名・押印が必須)。形式に不備があると無効になるため、公正証書遺言を選ぶか、法務局の「遺言書保管制度」を利用するのがおすすめです。参考:法務省:自筆証書遺言書保管制度

失敗3:エンディングノートを書いて「終わり」にしてしまう

エンディングノートは書いたら定期的に更新が必要です。銀行口座・住所・保険内容は変わることがあります。年に一度、誕生日前後に見直す習慣をつけることをおすすめします。

まとめ:今日から始められる一歩

終活は「全部いっぺんにやらなければいけない」ものではありません。まず今日できることとして、以下の中から一つだけ始めてみてください。

  • ☑ 書店・100均でエンディングノートを1冊買う
  • ☑ 親が使っている銀行の通帳を一緒に確認してみる
  • ☑ 次の家族が集まるタイミングで「終活の話」を切り出してみる

義祖母の終活を手伝ってみて、いちばん大変だったのは「やり始めること」でした。でも一度話し合いを始めると、意外とスムーズに進むものです。

このブログでは、私が調べた終活・相続に関する情報を引き続き発信していきます。相続手続きの詳しい流れについては「相続手続きの流れと期限一覧【亡くなってから何をいつまでにやるか】」もあわせてご覧ください。

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義祖母が2024年に90歳を迎えたことをきっかけに、相続・後見・葬儀を家族で一から調べ始めました。最初は「相続税ってそもそもいくらから払うの?」というレベルで、法務局に電話して手続きを確認したり、銀行の窓口で口座凍結の話を聞いたりしながら少しずつ知識を積み上げました。弁護士でも税理士でもありませんが、「同じ状況の家族が調べたらこうなった」という記録として、費用・期限・手順を具体的に書くことを大切にしています。
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