葬儀・お墓

墓じまいとは?費用・手続き・離檀料トラブルを家族で調べてわかったこと

木田健太郎

「田舎のお墓、誰が管理するの?」——義祖母が90歳を迎えたころ、家族の間でこんな話題が出るようになりました。義祖母の夫(義祖父)が眠るお墓は地方の寺院にあり、跡を継ぐ親族は全員が都市部に移住しています。年1〜2回の墓参りも体力的に難しくなってきた。そこで初めて真剣に「墓じまい」を考えました。

調べてみると、墓じまいは「遺骨を取り出してお墓を撤去する手続き」のことで、単純そうに見えて市区町村への申請・お寺との交渉・石材店の手配・遺骨の移転先確保と、複数のステップが絡み合う作業だとわかりました。この記事では、私たち家族が実際に調べてわかったことを、費用・手順・よくあるトラブルも含めてまとめます。

墓じまいとは?「お墓を閉じる」ということの意味

墓じまいとは、現在のお墓から遺骨を取り出し、墓石を撤去して墓地を更地に戻す手続きのことです。正式には「改葬(かいそう)」と呼ばれ、墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)に基づく法的手続きが必要です。

墓じまいが増えている背景には、主に3つの理由があります。

  • 後継者問題:子どもや孫が遠方に住んでいて、管理・墓参りが困難になった
  • 少子化・核家族化:お墓を引き継ぐ人がいない、または引き継がせたくない
  • 経済的負担:年間の管理費(年間1〜3万円程度)や修繕費が続く

厚生労働省の統計によると、改葬件数は年々増加しており、2022年度は約15万件に達しています。「お墓を持たない選択」が当たり前になりつつある時代です。

墓じまいと「お墓の引越し」はどう違う?

よく混同されますが、整理するとこうなります。

用語 意味 遺骨の行き先
墓じまい(改葬) 現在のお墓を閉じて遺骨を移す 別のお墓・永代供養・散骨など
改葬のみ 遺骨を別のお墓に移す(墓石は残す場合もある) 新しいお墓
お墓の引越し 同じ遺骨を新しいお墓に移す(改葬の一種) 新設したお墓

「墓じまい」という言葉は通称で、法律上はすべて「改葬」として扱われます。市区町村への届け出が必要な点はどのケースも共通です。

墓じまいにかかる費用の相場【工事費・離檀料・改葬先まで全部】

最初に費用の全体像を把握しておかないと、後で「こんなにかかるとは思わなかった」と後悔します。墓じまいにかかる費用は、大きく分けて4つです。

①墓石の撤去・処分費用

石材店に依頼して墓石を解体・撤去し、墓地を更地に戻す工事費です。

内容 相場
1㎡あたりの撤去費用 8〜15万円
一般的な墓(2〜3㎡)1基分 15〜30万円
大型墓・区画が広い場合 30〜50万円以上

私たちが複数の石材店に見積もりを取ったところ、同じ墓でも業者によって5〜8万円の差が出ました。必ず2〜3社から相見積もりをとることをおすすめします。

②閉眼供養(魂抜き)のお布施

遺骨を取り出す前に、お寺の住職に「閉眼供養(へいがんくよう)」または「魂抜き」をしていただく儀式が必要です。これは宗教的な手続きですが、ほぼ全寺院で求められます。

  • 相場:3〜5万円(お布施の目安)
  • お車代・御膳料が別途必要な場合あり(各5,000〜1万円)

③離檀料(りだんりょう)

檀家関係を解消するための「お礼」として求められることがあります。法的な義務はなく、相場も定まっていませんが、一般的には以下の範囲です。

  • 相場:0〜30万円(お寺・地域・関係性による)
  • 通常:3〜10万円程度で収まるケースが多い
  • 法外な金額を求められた事例もある(後述)

④改葬先の費用

遺骨を移す先によって、費用は大きく変わります。

改葬先 費用相場 特徴
合葬墓(永代供養墓) 3〜30万円 他の方と合同で供養。管理費不要が多い
納骨堂 30〜100万円 室内で個別保管。都市部に多い
樹木葬 10〜150万円 自然の中で埋葬。個別〜合葬まで様々
散骨(海洋葬) 5〜30万円 法律上の「墓」を持たない選択肢
手元供養 1〜10万円 遺骨の一部をペンダント等に加工

墓じまい全体の総費用目安:30〜100万円程度が一般的です。ただし改葬先を合葬墓にすれば20万円台で収まることもあり、逆に都市部の納骨堂に移すと150万円を超えることもあります。

墓じまいの手順と必要書類【改葬許可申請が最初のカギ】

実際に市区町村の役場(現在のお墓がある地域)に電話して確認したところ、改葬手続きには「改葬許可証」の取得が必須だと教えてもらいました。これがないと、石材店も遺骨を動かすことができません。

STEP 1:家族・親族で合意する

墓じまいは、お墓に関係する親族全員の合意が原則です。「聞いていなかった」という親族トラブルが後から発生するケースは非常に多いため、事前に全員に連絡を取り、書面で同意をもらっておくことをおすすめします。

STEP 2:改葬先を決める

先に遺骨の行き先を確定させないと、「改葬許可証」の申請に必要な「受入証明書」が発行されません。改葬先(永代供養墓・納骨堂等)と契約し、受け入れ証明を発行してもらいます。

STEP 3:市区町村に改葬許可申請を行う

厚生労働省が定めるルールに従い、現在のお墓がある市区町村の役所窓口(環境課・衛生課等)に以下の書類を提出します。

必要書類 入手先
改葬許可申請書 市区町村役場(無料)
埋葬証明書(埋蔵証明書) 現在のお墓を管理するお寺・霊園
受入証明書 改葬先の霊園・施設
申請者の身分証明書 運転免許証等

手数料は無料〜500円程度。「改葬許可証」が発行されて初めて、次のステップに進めます。

STEP 4:お寺に閉眼供養を依頼する

住職に連絡して閉眼供養(魂抜き)の日程を調整します。このタイミングで離檀の意向も伝えましょう。突然ではなく、半年〜1年前から相談を始めると関係を壊さずに進められます。

STEP 5:石材店に墓石撤去を依頼する

改葬許可証を取得してから、石材店に解体・撤去工事を依頼します。工期は通常1〜3日程度。完了後、墓地の管理者(お寺・霊園)に更地を返還します。

STEP 6:改葬先に遺骨を納める

遺骨を改葬先に持参し、必要な供養を行います。このときに改葬許可証を改葬先に提出します。

離檀料トラブルを防ぐ3つのポイント

墓じまいで最もトラブルになりやすいのが「離檀料」です。実際にあったトラブルとして、「100万円を要求された」「離檀料を払わないと埋蔵証明書を発行しない、と言われた」といった事例が報告されています。

ただし、離檀料の支払いは法的義務ではありません墓地埋葬法にも民法にも、離檀料を義務づける規定はありません。また、埋蔵証明書の発行を拒否することも違法行為です。

①事前に「離檀の意向」を丁寧に伝える

突然「墓じまいします」と伝えると感情的なトラブルになりがちです。「経済的・体力的に管理が難しくなってきた」という事情を丁寧に説明し、感謝の気持ちを伝えながら相談形式で切り出すのが基本です。

②金額は「お布施」の範囲で合意する

法的義務がない以上、離檀料は「お布施」の一種です。一般的なお布施の相場(3〜10万円)を目安に、双方が納得できる金額で合意しましょう。法外な金額を求められた場合は、弁護士や行政書士に相談することも選択肢のひとつです。

③交渉が難航したら第三者を介入させる

法テラス(日本司法支援センター)では、無料で法律相談を受けることができます。「離檀料を払わなければ証明書を出さない」と言われた場合は、速やかに専門家に相談してください。

遺骨の行き先を決める【永代供養・樹木葬・散骨・手元供養】

墓じまい後の遺骨の行き先は、家族の価値観や費用によって選択肢が異なります。現在最も選ばれているのは「永代供養墓(合葬墓)」です。

永代供養墓(合葬墓)

複数の方の遺骨を合同で供養するお墓です。後継者が不要で、管理費も基本的にかかりません。費用は3〜30万円程度と比較的安価で、公営霊園にも設置されています。

デメリットは「一度合葬すると遺骨を取り出せない」こと。将来的に「やはり個別のお墓に移したい」という変更ができないため、家族全員でよく話し合ったうえで決断することが大切です。

樹木葬・自然葬

樹木や草花の下に遺骨を埋葬する形式です。個別区画があるものから合葬型まで様々で、費用も10〜150万円と幅があります。詳しくはお墓の種類と費用を徹底比較した記事もご参照ください。

散骨(海洋葬・山林葬)

遺骨を粉末状(2mm以下)にして、海や山に撒く方法です。厚生労働省は散骨を直接禁止していませんが、条例で規制している自治体もあるため、業者選びは慎重に行ってください。費用は5〜30万円程度。

手元供養

遺骨の一部をペンダントや骨壺に加工して手元に置く方法です。残りの遺骨は合葬墓や散骨にするケースが多く、「手放したくないけれどお墓の管理はできない」という方に選ばれています。

墓じまいで後悔しないためのチェックリスト

墓じまいを決断する前に、以下の点を必ず確認してください。

確認項目 内容
✅ 親族全員の合意 事前に全員に連絡し、同意を書面で確認した
✅ 改葬先の決定 受入先の契約が完了し、受入証明書を取得している
✅ 市区町村への申請 改葬許可証を取得している
✅ お寺への事前相談 半年以上前から丁寧に相談している
✅ 石材店の相見積もり 2〜3社から見積もりを取り比較した
✅ 遺骨の数量確認 何柱(はしら)の遺骨があるか事前に把握している
✅ 費用の総額確認 工事費・離檀料・改葬先費用の合計を把握している

まとめ:墓じまいは「段取り」と「対話」が9割

墓じまいを実際に調べてみて感じたのは、「手続き」よりも「人との対話」の比重が大きい、ということでした。お寺との関係、親族間の合意、石材店の選定——すべてにコミュニケーションが必要です。

費用の目安は総額30〜100万円が現実的な範囲です。ただし改葬先の選択によって大きく変わるため、まず遺骨の行き先を決めることから始めるのが効率的です。

今日からできる一歩:

  • 家族・親族に「将来のお墓の話」を切り出してみる(合意形成が最優先)
  • 現在のお墓がある市区町村役場に改葬手続きの流れを電話で確認する
  • 改葬先の候補を2〜3か所リストアップし、見学・資料請求をする

終活の一環として、お墓の将来をどうするかは早めに話し合っておくに越したことはありません。詳しい終活の全体的な流れについては、親の終活、何から始める?の記事もあわせてご覧ください。

ABOUT ME
家族の終活ノート
家族の終活ノート
終活ブロガー
義祖母が2024年に90歳を迎えたことをきっかけに、相続・後見・葬儀を家族で一から調べ始めました。最初は「相続税ってそもそもいくらから払うの?」というレベルで、法務局に電話して手続きを確認したり、銀行の窓口で口座凍結の話を聞いたりしながら少しずつ知識を積み上げました。弁護士でも税理士でもありませんが、「同じ状況の家族が調べたらこうなった」という記録として、費用・期限・手順を具体的に書くことを大切にしています。
記事URLをコピーしました